【完】ぎゅっとしててね?
起きたら一時間たっていて、保健の先生に帰るように指示された。




教室まで荷物を取りに行ったら、誰もいない。
そっか。移動教室か。



芙祐にひざ掛け返さないと……って、忘れてきた。保健室は隣の棟の1階。めんどくさ。




保健室までひざ掛けを取りに行ってから、廊下を歩く。



ちょうどさっきチャイムが鳴ったところだから、廊下は授業終わりの生徒でいっぱいだ。



「あれ?弥生くん」



その声に振り向くと、あいつ。桜木慶太。


「帰るの?風邪?」



くもりない笑顔に見える、その裏の憎悪。こいつ怖すぎ。


本当、俺のこと嫌いだよな。
俺もだけど。



昼休みになった今、こいつが向かうのは芙祐のところ。
最近一緒に弁当たべてるって藍が言ってた。



……にしても頭がガンガンする。



「悪い、これ芙祐に借りたんだけど返しといてくれね?」



「……あぁ、じゃあ返しとくね」


「さんきゅ」



「その風邪って昨日芙祐ちゃんと泥遊びしたせい?」


「泥遊びなんかしてねえよ」



「仲良いね、お大事に」


「どーも」



廊下が険悪なムードでいっぱいになったから、解散。







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