【完】ぎゅっとしててね?
芙祐とは結局、告る前後とで、関係はそんなに変わらなかった。
しいて言えば、芙祐の悪ふざけがほぼゼロに近くなったけど。



     ♡
  




「告った意味あったんかな」


「見返り求めてたんだ?相手、彼氏いるのに」



無謀な賭けだったね、と麻里奈が笑った。



1月も終わる頃。
久しぶりに麻里奈が学校帰りにうちに来た。



いつものように、うちの愛犬モグに会うために。



「麻里奈こそ彼氏との喧嘩どうなったんだよ」


「もう別れる」



麻里奈は目を伏して、モグを抱きしめた。



「なんで?」


「なんか、ちょっと……好きじゃなくなったのかも……」



抱きしめたモグの頭を撫でながら、麻里奈は溜息をついた。


いや、そんなにしおらしく言う言葉じゃないから。


芙祐が悪魔なら、麻里奈は鬼。



「こわ。相変わらずの気分屋」



「そんなことないよ。ねぇモグ?」



中学3年間、いじらしく健気にみえる、このとんでもない気分屋にどれだけ振りまわされたか。


中学の時サッカー部ともめだした一因はまぎれもなくコイツだけど。
憎めないというか。
憎んでも無駄というか。



そのおかげで、いまや見事恋愛感情が、お互いにすっぽ抜けた。



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