【完】ぎゅっとしててね?
「弥生くんとのもめごとは、俺のせい?」


「違う、あたしの……」


優柔不断な心のせい。

なんて、言えない。絶対。



「弥生くんに気がいってるなら、追いかけるの今のうちじゃないの?」



笑顔、ない。慶太くん。



「ないよ、あたし慶太くんしか……」


「弥生くんと縁が切れるよ?」



いいの?って、真顔であたしに詰め寄る。



「け。慶太くんは嫌じゃないの?あたしとヤヨが仲良くしてたら」


「嫌だよ」


「じゃあなんでそんなこと言うの」



慶太くん、あたしをまっすぐ見つめてる。
いつものスマイル、全然なくって。
……怖い。



「弥生くんと芙祐ちゃんが仲良くしてんのすげえ嫌だけど……」



「だけど?」


首をかしげると、慶太くんは苦笑する。



「芙祐ちゃんが無理して俺と付き合うのはもっと嫌だよ」



「無理なんかじゃ……。あたしは慶太くんと付き合ってる。それだけでいたいの」


「同情で付き合うとかまじでいらないからね?」


「心底、慶太くんに惚れてるんだよ。あたし」




……それ以外はいらないの。
ひどいよね。残酷だよね。
思ったより、あたし不器用みたい。



もうこれ以上、深く聞かれたくないな。
あたしはそっと目をそらした。



「ふーん。じゃあ、本当に後悔ないの?」


「1ミリもない。慶太くんだけが好きだもん」


「はは。本当かなぁ……?」


「本当!」



コクコクとあたしが2、3度頷くと、




「まぁ……俺だけ見てればいいと思うよ」




あたしの頭をぽんっと撫でて、歩き始めた。





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