強引なカレの甘い束縛

入社してからずっと同じ部署で同じ仕事をしていて、それはこの先も変わらないと思っていたのに。

どうも風向きが変わったようで、落ち着かない。

私のそんな気持ちを察したのか、大原部長の言葉が続いた。

「まあ、代わりはいくらでもいるといっても萩尾さんレベルで簡単に仕事をすすめられる社員はいないからね、いない間の段取りはつけていってくれるか? それにしてもいいよな。萩尾さんや陽太が努力すれば、これからこの会社で何でもできるんだからな」

「何でもなんて、大げさな」

「大げさじゃないぞ。望めば女性初の社長にだってなれるだろうし、その可能性があるんだから、努力しないのはもったいない。そう、可能性があるのに切り捨てるのはもったいないから、しっかり講座を受けて、おいしい和菓子を食べて。で、望む未来を開拓していってくれ」

少なからず面倒くさい熱さを隠すことなく、胸の前で握りこぶしを作って見せる大原部長には何を言っても仕方がない。

私は手にしていた受講票に印刷された自分の名前を力なく見て、わかりやすいため息をついた。




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