強引なカレの甘い束縛


私の中にある勢いと力を総動員しての作業なのかもしれない。

けれど、私を好きだと言って、同じ未来を生きるために大原部長のバーベキューに連れて行ってくれて。

きっと陽太にとっては大きな決断だっただろうし、かなりのパワーが必要だったに違いない。

そんな陽太の想いと行動力に応えるためにも私自身の気持ちをちゃんと言葉にして態度で示さなければいけないと、遅まきながら気づいた。

状況の変化に不安を抱き、そして、姉さんへの申し訳なさに立ち止りながらも、私を求めてくれる陽太のそばで幸せになりたい。

だから、たとえ不慣れでも、照れてしまっても。

「陽太がプロジェクトでいい結果を残せるように、近くにいるからね。たとえ目の届く範囲で放り出されたとしても……ね」

私の声は次第に小さくなり、照れくさくて視線をあげることもできないけれど。

まずは陽太を好きな気持ちに素直になってみよう。

私の様子に陽太は口を閉じたまま、ひたすら手をつないで歩き続ける。

駅はもうすぐだ。

あれほど自分の人生の変化を拒んでいた私が、陽太によって変わりつつある。

それは思いの外心地よくて、自分の立ち位置を変えても大丈夫だと思える勇気をもらった。

そして、陽太への想いを新たにした私は、どうせなら陽太の手助けになれる努力をしようと、思った。

「とりあえず、講習会で勉強してくるね。……あまりにもちんぷんかんぷんで寝てしまわないように、気をつけなきゃ」

「寝る間がないほど、勉強させられるから、安心しろ」

私の言葉に、どこかホッとしたような息を吐き出しながら、陽太は笑った。




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