オフィス・ラブ #another code
帰国時、関空への直行便はなく、成田を経由せざるを得なかった。

どうせならと横浜の家に寄っていくことを決め、空港でマネージャーたちと別れた。


真冬の衣服をまだ大阪に送っていなかったし、当初は最小限にとどめておいた本も、やはりもう少し向こうに置きたい。

下界の風景さえ目に入らなければ高いところも問題ない新庄は、それでも長いフライトにくたびれた身体で、まっすぐに家を目指した。

明日の夕方には、OBの家を訪ねる予定になっている。

その前に、恵利に会えないだろうか。



車を取りに来た時には入れなかったマンションのエントランスをくぐった時、今から会いに行ってしまおうと思い立った。

着替えてすぐに出れば、向こうで顔を見るくらいの時間はある。

恵利の家からの終電時刻は、何度か使っているので頭に入っていた。

おそらく問題ない。


電波の悪いエレベーターホールを抜け、もどかしい思いで部屋に入り、携帯を取り出す。

若干、ダメで元々という気分だったが、予想外といおうか期待どおりといおうか、コール音が聞こえた。


安心したせいか、バカめ、と改めて腹が立ってくる。


会いたいのは、俺だけか。

声を聞きたいのは、俺だけか。


寂しいに決まってるとか言っておいて。

あんなに泣いておいて。

連絡をよこしたのは、結局あの一度きりじゃないか。


なんなんだ。


時計を見ながら、向こうにいられる時間を計算する。

案外空港からの乗り継ぎがスムーズだったので、1時間くらいは時間を持てそうだった。

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