同居ノススメ

いよいよ時間は

21時を過ぎた。

慎太郎は、
桃の勤務先も知らなければ、

桃の友人とも、
まだ逢えていない、

実家も家族のことも
よくわからない。

桃のことを知ったつもりで
なにも知らなかったことを
思い知らされる。

不安と心配ばかりが
押し寄せてきて、落ち着かず、
家のなかをウロウロする。

クルマを走らせて
迎えにいこうにも

桃がどこにいるのかさえ、
分からない。

恋人になって、
すっかり浮かれていて、

大切なことを置き去りに
してたことを後悔した。

慎太郎は、
ソファーに体を預けて
目をつぶると、

桃の笑顔ばかりが思い出され、
涙が溢れてきた。


『桃、どこにいるんだ?
お願いだから、帰ってきて。』
< 184 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop