エリートな彼と極上オフィス

「だいたいどのあたりが入れ替わるのか、教えていただけますか?」

「見たら三日後までは忘れてほしい」



部長が脇の机の上に、一枚のA4用紙を置いた。

じっくり確認すると、先日コウ先輩が千明さんから聞いたものと、ほぼ同じだった。

若干減っている。

ということは、年明けあたりに第三次があるのかもしれない。



「これも社長のご意向で?」

「そういう印象を受けた」

「どういう意図なんでしょう」



我々IMCの改革は、広告宣伝、顧客サービス、従業員のオーナビリティ、という三つの強化軸を掲げている。

オーナビリティというのは、"自分事化できている度合い"というか、積極的な責任感のことで、ついでに言うとその三つの後に、品質管理、戦略CSRと続く。


一連の人事は、どう見てもその計五つの軸を狙い撃ちしたようにしか見えず、いくらなんでも露骨すぎる。

これでIMCとは無関係なんて言いきるつもりなら、社長はどうかしてしまったとしか思えない。



「私もそこを尋ねた。私以外にも、疑問視する声はあったからね」

「返答は」

「考えている、とだけ」



役員の異動となると、人事部長の権限も限られるんだろう。

榎並部長を責めるわけじゃないが、情報が足りない。



「こういうのって、社長がひとりで考えるわけじゃないですよね、誰か相談相手というか、意思を共有している人は、いないんですか」

「取締役の中に、相談を受けた役員はいるかもしれない」



部長がうなずいた。



「約束はできないが、何か聞き出せないかやってみよう」

「無理にとは」

「私も気になるところだからね」



さりげない目配せを、ほんの一瞬してみせて、彼は部屋を出ていった。

これで何かわかればラッキーで、何もわからなくても、失うものはない。

続報を待とう。

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