甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「いえ。高校は部活なかったし、大学のときも文化系の愛好会にいたのでまったく」
「……準備運動してから走ったか?」
「あっ、してない」
「走った後のストレッチは?」
「してません」
「しろ。走ったあと気持ち悪くなることもあるし、絶対怪我するからって、もうおせーか」

そう言うと課長は口を閉ざす。右車線に移ると、赤信号に変わり止まった。

つけっぱなしのラジオから「次は、オレンジ大好きさんからのリクエストです。アレキサンドロスでリービンググレープフルーツ」とパーソナリティが言うから耳を傾けてしまう。

以前から好きな歌だったからだ。
二人が愛しあってぶつかりあって、切ない別れをする歌詞に、今の自分と重なりそうなのに、私と彼はなんだか似合わない。
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