甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

ああ、あれかと思い出したようで、続けた。

「言っちゃいけないやつ」
「言っちゃいけないやつ?」
「ごめんね。なんか私も色んな記憶がごっちゃになって軽はずみなこと言っちゃった感じだったんだ」と、目を伏せた。

あはは、すっきりしないよねと笑うけどどこかぎこちない。

「まあ、それを聞いたときは何かあったってわけじゃないんだけど。なんていうんだろう。昔の恋をぶり返しそうになったから、気をつけないとって感じの話だったかな。あんまり言うと怒られちゃうから、ごめんね。これも内緒ね」
「いいえ、すみません。話せないこと尋ねて」

華さんが少し気落ちして見えてその話題は続けられなかった。



「真唯子さん、飲み過ぎました?」と自転車を押す綾仁くんが言った。
今日も綾仁くんと帰る時間が重なり、途中まで送ってもらっていた。

「え、あ、ううん。大丈夫だよ。送ってくれてありがとね」
「いいえ。時間ちょうど良かったんで」

そう言うと、三毛猫が路肩に蹲っているを見つけた。

「あ、やばい、今日も猫ちゃんいるね」
今日は触れるかなと小さく舌打ちをして近づくけど、思った通りサッと逃げられてしまった。
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