甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

程なくして、実家に着いた。
「ただいま」と玄関に入ると後ろから真唯子が「お邪魔します」と着いてくる。

「あっ、お帰りなさい」
母さんがパタパタとした足取りでやってくると、真唯子に向かって
「あら、初めまして。顕人の母です」
「初めまして。小千谷真唯子と申します」
深々とお辞儀をした。

「はいはい。真唯子ちゃんね。よろしくね。可愛いらしい子じゃない」
と俺に向かって言うので
「兄貴と姉ちゃんは?」
尋ねると
「ああ、昨日、遊びに来たわよ。今日は来ないんじゃないかな?」
と答えた。

兄貴、姉ちゃん夫婦は県内(兄貴は近所)に住んでいる。遊びに来ているときは甥や姪も一緒に来るので、遊べとせがまれることが多い。
今日のところは、ゆっくり出来そうだと胸を撫で下ろした。
「奥の和室、使ってちょうだい」と言うので、真唯子を通した。

「疲れたろ」
三時間以上車に乗っていた。荷ほどきをしている真唯子をねぎらうと「ううん。大丈夫」と明るく答え、鼻唄をうたい始める。

それにしても、さっき、これお土産ですと紙袋を手渡していたのだが、スーツケースの中から、次から次へと手土産らしきものが現れて、あれでもないこれでもないと道具を撒き散らすドラえもん状態だ。
そういえば、さっきのサービスエリアでもしこたま買い込んでいたな。
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