夢恋・second~その瞳に囚われて~

「いや。彼が赴任してまだ日も浅いのに、反響が凄いからさ。女性社員は皆、彼の噂をしている。彼に一番近い場所にいる君もそうなのかなって、そんなつまらないことを考えてしまってさ」

私はなにも言えずに、佐伯さんの顔を凝視した。

「……参ったな。こんなおじさんが嫉妬するのはやっぱりみっともないね。余裕がないんだ。君は若いから……不安になる」

照れたように笑いながら、佐伯さんは俯いた。

「いえ、そんな。……私は……主任をそんな風には……見てはいなくて……」

それだけ言うのがやっとだった。

実際は、隣にいるだけで息も苦しくなるような毎日だから。

「はは……っ。そうだよね。君はそんな子じゃない。男性を見て騒ぐような、浮かれた真似はしないよね。……馬鹿だな。分かっていたのに思わず聞いてしまって……」


「佐伯さん……」

「どうやら俺は、自信を失くしかけているみたいだ。星野くんみたいな男を見ると特にね。君を……まだ、俺のものにできないからなのかな」


彼に言われ、あの日のホテルから見た夜景の光を思い出す。

拓哉の声が、頭の中でこだました、切ない夜。
拓哉の顔がちらついて、佐伯さんを傷付けてしまった。
そんな自分が、とても嫌な人間に思えた。




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