夢恋・second~その瞳に囚われて~

一日だけの偽装カップル


✼✼✼


今も、記憶の中にある。
あの日の夜の街並み。
君と交わした会話。
その表情や声。
何もかもすべてが、色褪せることなく鮮明に。



芹香と手を繋いで、イルミネーションの光る街を歩く。

「綺麗だね。嬉しいな。来年もまた、一緒に来ようね。きっとだよ」

そう話しながら、芹香ははしゃいだ様子で、頭上に煌めく光のアーチを見上げる。
そんな彼女の、輝く笑顔を見下ろして俺はふっと笑った。

「……寒い?鼻が赤くなってる。まるで歌に出てくるトナカイだな」

俺が言うと、芹香は口を尖らせた。

「もう。バカにして。真面目に言ってるのに」

「ごめんごめん。かわいいからさ。ついね」

俺の言葉に、彼女は俺を見上げて再び笑顔に戻った。

「かわいい?本当にそう思う?」

「本当に思うよ」

「じゃあ、許そうかな」

「はははっ。単純だな」

子ども扱いしたような言い方だったのに、今度は彼女は拗ねなかった。
俺を見つめて笑う。

もうじきクリスマスを迎えるこの季節。
街は色づき、人が溢れる。

あと数ヶ月で、芹香と付き合いだして一年になろうとしていた。
順風満帆な関係だったと思う。芹香は確かに俺を愛している。それを実感していた。

俺も、そんな日々を大切に抱きしめるようにしながら、彼女と時を刻んでいた。
その頃の俺は、二人で一緒にいることが、なによりも幸せだった。







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