クールな同期が私だけに見せる顔
「あら、早いのね?」
「ええ」
オフィスについてすぐに、美登里さんは
私の姿を見つけて声をかけてきた。
省吾に会わないように、30分も早く来ていた。
美登里さんは、何分も先に出勤していて、すでに働ける状態に準備を整えていた。
準備を整えるといっても、メールチェックみたいな業務じゃなくて、彼女の場合、
メイクとファッションのことだけれど。
今日の美登里さんは、明るいベージュのパンツスーツに、涼しげに見える、淡いブルーのメイクで完璧に仕上げて来ている。
美登里さんが、普段と変わりないことに
腹を立てても仕方がない。
それに、今日は彼女に逆らう元気もなかった。
朝早くに目が覚めたのでと、適当に答える。
「早速なんだけど」
「また、銀行ですか?」
私は、美登里さんの行動を一週間記録していた。
実際に、銀行へ出かけると言って、フロアを出て行った回数を、記録したメモを持っている。
「ええ、そうよ。悪い?」
「いいえ、悪くないですけど……」
相手の行動を批判したら、行動を制限するようになったり、そもそも止めてしまうかもしれない。
だから、逆らわない方がいいと思い直した。