クールな同期が私だけに見せる顔
省吾は、ソファに座ってテレビを見ていた。

スポーツニュースが流れていたけれど、彼は眺めているだけで見てはいないようだった。

「冷蔵庫、勝手に開けたけど……」

彼は、手にしている柑橘系のチューハイの缶を持ち上げた。

「うん」

ずっと奥にしまわれたままになっていたから、それは構わない。

ソファの前には、小さなテーブルが置いてある。

省吾はそのテーブルを、テレビの置いてあるサイドテーブルに寄せていた。

長い足が邪魔だろうから仕方ないんだけど。

これでは、テーブルの向こうを通るわけにはいかない。

おまけに、彼の長い足が私の行く手を塞いでいる。


トイレにでも行ってくれないかな。


「コップ出そうか省吾?つまみは?」

「いらない。そんなことより、ここに座れよ」

彼は、二人掛けのソファの、開いているスペースをトントンと手で叩く。


その前に、下着つけてないから、落ち着かない。
スース―する。

下着取りに行きたいんで、そこ退いてくれないかな。

なあんてこと言えるわけがなく、適当に返事を誤魔化して彼の前を通り過ぎようとした。

「待てよ」

「えっと……
ちょっと待ってて。すぐに戻るから」

「下着つけないで寝るんだろ?だから、いらないんじゃないのか?」

「何でそれを?」

「この間、一緒に寝た時、そう言ってた。実際に目撃したし」

「えっと……」

酔って帰った時は、おぼろげながら……
そんな風にしてるんじゃないかなって記憶はある。

体が火照って熱くなるからだ。


「着ているもの、豪快に脱ぎだしててたぞ。お前、気を付けろよな。

人が居るときぐらい、少しは恥じらえ。
下心見せないようにしてたのに。
必死に欲望を隠してる男の前で、着てるもん全部脱ぐな」

「省吾……それ、誰の話?」
彼は、肩をすくめて誤魔化した。

「どうせ、今日は寝かさないから、そんなもん必要ない」

「あのね、何度も言ってるけど、あんたとは……」

「俺、お前と付き合おうと思う。
だから、そんなことで恥ずかしがるな。まあ、いいから座れって」

「えええっー!!」
< 45 / 220 >

この作品をシェア

pagetop