フラワーガーデン【アリシア編】
「おじい様は現役時代、沢山の人の命を奪ったのかしら……」

先生は真剣な目で、遠くを見つめる私の腕を掴む。

「アリシア。僕はヘイワーズ氏が昔どんな功績を立てたとか、どんな過ちを犯したとか知らないけど、これだけははっきり言えるよ。君のおじい様は素晴らしい方だ。
どう生きたかではなく、今、どう生き、そしてこれからどう生きるべきかを常に考え、慈善事業を通して実行している……」


先生の揺るぎない信念を持った言葉に涙がじんわりと滲む。

厳しいおじい様。

だけど、私にはどこまでも甘いおじい様。

そのおじい様は病魔と闘っているのに、私はジョージとの事で苦しめてしまっている……。

その上、こんな風に家出までして……。

きっと今頃心配しているわ。

初めて、おじい様に悪いことをしているという想いに胸が締め付けられる。


ハラハラと零れ落ちる涙ごと、先生は私をその胸に抱き止めてくれる。


「何があったか知らないけど、君が見たままのヘイワーズ氏の姿を信じるんだ。その中に、真実があるはずだから」


先生のTシャツで、涙を拭いながら、何度も頷く。



この時、数台の車がモーテルに滑り込んできたことを知るべくも無く……。




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