フラワーガーデン【アリシア編】

噴水から数分離れた古びた映画館の前にアリシアはいた。


やっぱり。


「食いしん坊アリシア」


美味しそうにクレープを頬張り、階段に座っているアリシアの姿を見つけ泣きそうになる。


サドルから腰を浮かせて降りると両足を片方のペダルに乗せて体を預け、そのまま自転車を滑らせた。


アリシアは僕に気付いたらしく、クレープをその手から落としてしまっていた。


僕はそんな彼女の前に回りこみ、自転車から降りた。


「探したよ。一人で行こうなんて、無茶だよ」


アリシアはしゃがみ、残念そうにクレープをその手に取ると、そのまま肩を震わせた。


「だって……。もう、無理だもの」

「何で？」

「だって、先生……」


僕は自転車から降りると、彼女の前に跪き、彼女の手を取った。


「そうだよ。僕は君が好きだよ。ずっと、ずっと、前から。
たぶん、始めた出会った時から。……ごめん」


アリシアは僕の突然の告白に口をポカンと開けたまま、ポロポロと涙を流す。


「君がジョージを好きなことは知ってる」

「先生……」

「一緒にいたい。せめて君を無事、ジョージのところに送り届けるまで」

「だけど……」

首を横に振り、俯いたまま困っている彼女を僕は壊さないようそっと抱き締める。


「君の側にいるのは苦しいけど、君がいないともっと苦しいんだ」