フラワーガーデン【アリシア編】
「良かった。これで、第一関門は突破できそうだ」

「先生、一人で行けばいいわ！」

「えっ？ちょっ……待って、アリシア！？」


アリシアは椅子から立ち上がると、制止する僕の手を振り払ってスタスタと歩き出した。

僕も慌てて、アリシアの後を追った。


アリシアは通りの信号を渡り、向かい側にある公園の大きな木におでこをコツンと当てると、肩で息をしながらＴシャツの胸元を両手でぎゅっと掴んでいた。


僕は頭を掻くと、さっきの説明をしようとした。

だけど、さっきから僕の顔を観ようともしないアリシアは僕の言葉に耳を貸してくれそうもない。

仕方が無いので、僕は彼女が落ち着くまで芝生の上に腰を下ろし、ずっとただ側にいた。


暫くすると、アリシアは鼻を啜り、しゃがみ込むと立てた膝に顔を埋めた。


「どうしたの？」


僕の言葉にアリシアは首を振る。


「言ってくれなきゃ、なんで泣いてるのか分からないよ」


アリシアは何かゴニョゴニョと口篭もったけれど、よく聞き取れなかった。


「何？」

「……先生が……他の女の子達と……あんなに楽しそうに話すの……見たくない」

「それは、しょうがないよね。そうでもしないと計画……が……」


えっ？！

なんだって？


ナンパに乗った理由を言い掛けて、僕の思考が停止する。


ア…リ…シア

もしかして……

ヤキモチを焼いたの？


無言でうずくまるアリシアの体は、まるで亀の甲羅のように堅くなっている。


危うく先日の約束を破って、アリシアに触れてしまいそうになる手を慌てて引っ込めた。



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