Ri.Night Ⅳ
「……十夜ね、ずっと見てたよ」
「え?」
「車内でずっと凛音ちゃんの事見てた」
十夜、が?
「十夜って鈍いじゃない?女心が分かってないというか。だからあんな風に言うとは思わなかった」
「……あんな風に?」
ふふっと眉を下げて微笑む遥香さんに首を傾げる。
「十夜は最初、私に言うつもりはなかったんだと思うの。行く前に“迎えに行く”って言ってあったしね。わざわざ言葉にする必要はないと思ったんだと思う。
けど、凛音ちゃんを見て思い直したんじゃないかな。凛音ちゃんの為に言わないとって」
「………」
「凛音ちゃんは特別なんだなって思った。あの無口な十夜が口に出して言うなんてね」
ホントビックリしたよ。
そう言って笑う遥香さんはやっぱり哀しそうで。
その笑顔を見たらなんて返事したらいいのか分からなくなった。
気の利いた言葉の一つも言えない。
遥香さんはこんなにも苦しみながら言ってくれているのに。
「凛音ちゃん、十夜と仲良くね」
「……はい」
優しく微笑んでくれる遥香さんにあたしは小さな返事しか返せなかった。
「十夜の所に言ってあげて。さっきからずっと心配そうにこっち見てるから」
「……こっち見てる?」
その言葉に振り返ると、遥香さんの言った通り十夜が車に凭れてこっちを見ていた。
心配そうな、と言われると首を傾げるけど、それはさっき言ってたように付き合いの長い遥香さんだから分かるのだろう。
そんな些細な事にも嫉妬してしまうあたしはホントに心が狭いと思う。
「凛音ちゃん、またね」
「はい、また。さようなら」
ペコリと勢い良く頭を下げ、その場から小走りで駆け出した。