強引社長の不器用な溺愛
振り向かず、ぶっきらぼうに言う。


「シャワー浴びるわ。お休み」


「はい、明日は10時の新幹線ですので」


篠井の声が背中に聞こえた。俺は首を振った。


「おまえは先に帰れ。俺はもう一度行方さんと打ち合わせして帰ることになってる。チケットの時間変更なんかは自分でやるから大丈夫だ」


嘘八百だけど、篠井が反論することはないと踏んでいた。

案の定、篠井はわかりましたと呟き、それっきり何も言わない。


俺がシャワーを浴び出てくると、テーブルの上は片付き、篠井の姿はなかった。
紙皿にのったカシスムースだけがぽつんと俺を待っていた。





< 121 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop