強引社長の不器用な溺愛
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唇同士が離れるまでに一体どれだけの時間がかかったのかわからない。
時計を見るヒマも考える余裕もなかった。
机に押し倒された格好で社長のキスを受けていた私は、うっすらと瞳を開け彼の顔を見つめる。
キスの余韻が残る濃密な空気。
さほど離れていない唇と唇はすぐにでも再びくっついてしまいそうだ。
視線が絡む。
すると、社長はふっと目をそらした。
そして、あっさりと私の上から退いた。
「電話……」
ぼそっと言い、スマホ片手にオフィスを出ていく八束東弥の姿。
私はデスクに身体を起こした格好で、呆然と見送った。
おい、こんな深夜に誰が電話してくるってんだ?
ステディなジョーカノでもいるってか?
言い訳がわかりやす過ぎるんだよ、このやろう!
挑発しておいて、キスしておいて、逃げやがった……あの男。
怒りでぐらぐらしてくる頭と裏腹に、デスクに座ったまま私は自分の唇に触れていた。
さっきまで社長としていた濃厚なキスの感触はまだしっかり残っている。
知らず頬が熱くなる。
そして次の瞬間、はたと我に返った。
私……なんてことをしちゃったんだろう!