強引社長の不器用な溺愛
「逃げんな」


唇の隙間から言われる。
断じて逃げてなどいない。

私は挑戦に応えるために、自らの舌を彼の口腔深くに侵入させた。
百戦錬磨の勝負師のように、余裕を持って舌を絡めると、彼がぴくっと反応した。

驚いた。

彼は、デスクに積まれた資料を片手で払う。
どさどさと音をたて落ちる書類など気にも留めず、私を抱き上げるとデスクに背から押し倒した。


「社長っ!」


「キス以上しねえよ、バーカ」


八束社長は私をデスクに押し付け、キスを再開させた。
狂おしく激しい動物的なキス。

私はキスに打ち勝つため、また存分に浸りきるため、自らも彼の唇を味わい続けた。




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