強引社長の不器用な溺愛
重松敬三は大商社、安野産業の若き常務だ。
経営のコンサル会で俺と知り合った時はまだ部長だったけど。

彼が安野産業のありとあらゆる部署に繋ぎを作ってくれた。
八束デザインの売り上げの実に4割は安野産業の仕事だ。

ありがたいと同時に、期待に応えたいと思うのは、人間として当然。
がむしゃらにやっているうちに7年が経っていた。

まー、俺は仕事を取ってくる営業役で、あとのことはメンバーがやってくれるっつう気楽な身でもあるんだよな。
みんなの協力で、俺の会社はどうにか回っている。
こんなこと、口に出して礼なんか言わないけれど。

待ち合わせの時間まで少しあるので、コーヒーを飲みにチェーンのショップに入る。

禁煙だからか、女子が多い。
大学生くらいか?まだ会社員が出てくるには1時間ほど早い時刻だ。

みんな小綺麗だ。
以前ほど女子のファッションの多様化は見られない。

俺たちが大学生だった頃なんて、もっとすごかった。
いや、美大生っつうのも特徴かもしれない。

雑誌から抜け出てきたようなトレンド感はあるけれど、一律な女子たちを横目に本日のコーヒーを飲む。

うーん、こうして有象無象の女子の集団を見ると、篠井絹はやはりなかなか美人なのだと思い至る。
< 33 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop