強引社長の不器用な溺愛
にっこりと笑顔を作り、いまだ胡坐をかいたままの社長を残し、颯爽とオフィスを後にした。

心の中では全力で叫んでいた。


やらかしたぁぁぁぁぁぁ!

自分からキスして、遊び慣れた女気取って、ノリノリで。

挙句、社長がさらっと引いて、壮絶にがっかりしてんじゃねーっ!


ああああああ!穴があったら埋まっていたい、永遠に!

電車はまだあったけれど、完全に正気を失っているため(自己判定)、タクシーを捕まえる。
スネも痛いし!

後部座席で頭を抱え、ひとまず思い出した。

私が手本にした大人の女は、土日に見ていたドラマだ。
あのお仕事も恋も頑張っちゃうぞ☆系ドラマだ。
あんなフィクションのファンタジーを参考にして、世慣れた女を演じちゃったよ。

というか、この心の拍子抜け感、どうすりゃいいの!?
それに、すさまじい動悸が、キスからこっちずーっとおさまらないんだけど!
誰か、水と救心持ってきて!

あー、無かったことになんないかなぁ。今度こそ!
なんないよねぇ!

頭を抱えたまま、微動だにしない私を、タクシーの運転手はたぶん変に思ったに違いない。




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