蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…結婚式の日取りは、雪愛のお腹が安定期に入って、落ち着いた頃。

それが、今日、快晴に恵まれた大安吉日。

教会の前、蘇芳先生と2人で、バージンロードを歩く。蘇芳先生のお父さんが一緒に歩くと言い張ったが、蘇芳先生が譲らなかった。

「…蘇芳先生」
「…」

腕を組み、蘇芳先生の名を呼んだ雪愛。だが、蘇芳先生は返事もせず、ただ雪愛を見下ろす。

「蘇芳先生?」
「…籍はもう入ったよな」

「…そうですね」
「…じゃあ、雪愛も蘇芳だけど」

蘇芳先生の言葉に、あっと声を上げる。

「…そろそろ秀明って呼んでもらいたいんだけど?」

「…そうですね…」
「…ほら早く。式が始まる」

「…式が終わってからじゃダメ?」
「そんな可愛い顔して言ってもダメ」

「…秀明さん」
「…さん付けかぁ」

「当たり前じゃないですか。私より10歳も年上なんですよ」
「…俺は気にしないのに」

「私は気にします」
「…仕方ない、これで許すか」
「え?…⁈」

誓いのキスの前に、キスをした蘇芳先生に目を見開く雪愛。

「秀明さんヒドイ!誓いのキスの前に」

雪愛の言葉に、蘇芳先生はニコッと笑って誤魔化した。
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