自殺列車
記憶が戻る
朋樹の体は澪と優志の隣に落ちてきて、顔面から着地したためその顔は消えてなくなってしまった。


首だけでは体重を支える事もできず、朋樹の体はゆっくりと横倒しになった。


「朋樹……」


愛奈が震える声で朋樹の名前を呼ぶ。


愛奈はよろよろと立ち上がり、朋樹の落ちて来た窓へと近づいていく。


「愛奈……」


とめた方がいいのかどうかわからず、あたしはその場にとどまった。


「朋樹は喧嘩。優志は病気。澪は? 澪はなにに当てはまってたんだ?」


旺太が早く何かのヒントを見つけようと、頭をかきむしる。


「あ……澪は足が軽くなったって言ってけど」


「そうか。そうだったな。だとするとこの言葉に当てはまるのは……事故、か?」


「そうかもしれない」


「穂香、お前は体の異変はなかったのか?」


そう聞かれ、あたしは自分の胸に手を当てた。


あの時、あたしは心がスッと軽くなったように感じていたんだ。
< 101 / 222 >

この作品をシェア

pagetop