自殺列車
ハッハッと小さく呼吸を繰り返す。


苦しくなって喉をかきむしる俺。


どうしてだ?


俺はもう死んでいるはずなのに、どうしてこんなに苦しい?


爪を立てガリガリと喉をかき、皮膚がめくれて血が流れ出る。


それでも呼吸ができなくて、俺は自分の手で自分の皮膚をえぐっていた。


次に胸が苦しくなり、止まっているはずの心臓が押しつぶされそうになる。


「く……あっ……」


苦しみにあえぎ、冷や汗が流れた。


この苦しみを俺は知っている。


一度、ベッドの上で経験したのと全く同じ苦しみだ。


「ど……して……」


俺は車掌へ聞く。


しかし車掌はニタリと不気味な笑顔を浮かべただけで、スッと消えて行ってしまった。


どうして、また苦しんでいるのか。


電車の中では平気だったのに、どうして……。


気がつけば、目の前に電車の窓が見えていた。


先に落下していた澪の屍が見える。


『ここで償え』


車掌の声が最後に聞こえて、俺は澪に覆いかぶさるようにして窓に落ちたのだった。
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