自殺列車
そしてふと思いついた。


空中へ目をやり「おい、出て来てくれ!」と、声を上げる。


しかし空中からはなんの返事もない。


「おい! 見てるんだろ!?」


もう一度声をかけると、黒スーツの車掌が闇の中に浮かんで姿を現した。


「1つ、お願いがあるだ」


「なんだ?」


「優志をここへ連れて来てほしい」


俺の言葉に車掌は無言のまま首を左右に振った。


「なんでだよ!?」


「あの子は、今日はもう消えている」


そう言われ、俺は優志が窓の外へ出た光景を思い出していた。


「明日になればここへ連れてこられるのか?」


「その可能性は低い」


「なんでだよ!?」


こんな場所で1人で泣いている母親を、放置なんてできるわけがない。


俺がここにいることができるなら、優志だってできて当たり前だ。


そして俺とマリのように夢として通じ合う事も出来るかもしれないのに。
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