自殺列車
「ち……がう……。そんなんじゃない……」


否定しながらも、澪の震えは増していく。


「澪、ちょっと落ち着いて」


席から立ち上がり、澪に近づいた。


その時だった。


澪は微かに口角を上げてほほ笑んだ。


その顔に、あたしはなぜだかビクッとして立ち止まった。


「あたし……思い出した……」


震える声で澪は言う。


思い出した?


一体、なにを?


そう聞こうとしても、声がでない。


聞いちゃいけない。


本能的にそう感じている。


「さよなら……またね……」


澪はそう言うと、窓の外に吸い込まれるようにして闇へと消えていったのだった。
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