自殺列車
落ちてくる
今のところ、この空間でわかっていることはごくわずかだった。


全員が青い蝶に誘われるようにして電車に乗った事。


みんなの力や体調が平等になっていること。


そして、みんな一様に何か大切な事を忘れているという事だった。


しかも、どれも曖昧で輪郭がぼやけている。


大切な部分はまだなにもわからないままだ。


色々と推測を立てて見ても、どれも信憑性に欠けていて、結局また黙り込む結果になってしまう。


それを何度か繰り返して沈黙が訪れた時、突然ドンッ! という大きな音が聞こえてきてあたしたちは全員動きを止めた。


「な……なに、あれ!?」


最初に声を上げたのは愛奈だった。


愛奈は青ざめた顔で窓を指さしている。


それは開けられた窓と正反対に位置する窓で、愛奈の指に誘導されるようにあたしたちは視線を移動させた。


そして、視界の中に飛び散った血が入ってきた途端、あたしは「ひっ!」と、息を飲んだ。


窓の外側は血にまみれ、その中に人間の潰れた顔が浮かんでいたのだ。
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