1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「どうぞ、座ってください」

 施設長に促されて椅子に座ると、施設長はお茶を出しながらまじまじと見つめてきました。

 …そんなに見つめられると照れちゃいます。

「やっぱり、晴野蓬さんなんですね」

「やっぱりと言うことは、察していらっしゃったんですね?」

「えぇ、情報屋さんが来なくなった時と事件の発表が被っていたので。もしかしたらとは思っていましたよ」

「流石ですね。でも、お礼とかそういうのはなしでお願いします。情報屋の時に十分伝わりましたから」

「分かりました。…情報屋さんではなく、蓬さんの姿で会いに来てくれたのは何か、理由がありますか?」

 あはは、ほんとに敵わないなぁ…。
 流石、何人もの子どものお母さんです。

「…情報屋を、やめます。なのでこれが最後の寄付になります」

 ポケットから抜き出した茶封筒。

 もう、情報屋としてお金をもらうことはないから。だから、活動に必要だったお金も全部下ろしてきてここに持ってきました。

 だから、これがなくなれば完全に私は情報屋ではなくなるわけです。

 施設長はそれをじっと見つめていました。
< 3 / 523 >

この作品をシェア

pagetop