何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
不思議な胸の高鳴り
私は女子の群れから目を離しゆっくりと歩き出した。


何処に行くのかとか、そんな事はお構いなしに。


この空間にはいたくなかった。


今はただ遠くに行きたい。
拓哉さんに話しかける女性の声が届かない所まで……。



騒がしいパーティー会場を私はひたすら歩き続ける。
無駄に広い会場に腹が立ってくる。


歩いても歩いても出口に辿りつかない。
思わず泣きそうになり私は俯き足を速めた。


そのせいで気が付くのが遅くなったんだ。
急に飛び出して来た人の存在に。


気が付いた時にはもう遅かった。



「きゃっ……」



小さな悲鳴と共に私の体は後ろへと大きく傾いた。
倒れる、そう判断した私は痛みに耐える為に硬く目を瞑った。


でも不思議と体に痛みは走らなかった。


恐る恐る目を開ければ息が止まりそうになる。


だって目の前に格好良い男の人の顔があったから。



「大丈夫か?」



そう言いながら心配そうに眉を下げる男の人。
茶色い髪が、色っぽい声が、私の鼓動を高鳴らせた。
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