何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
繋がった想い、決別の時
「え……引っ越したの?」

「あぁ。って言っても、場所が変わっただけで他は何も変わってねぇけどな」



遥斗の言葉通り“何でも屋”は違う場所へと移動していた。
前の場所とは全く違う所にあるけど、相変わらず小さなビルの4階が事務所で5階が家という構図は何1つ変わっていなかった。
しかも、家具の場所とかも前に来た時と変わっていない……。



「何で引っ越したの?」

「……」



私が訊くと遥斗は何故か黙り込んでしまう。
そして、決意した様に私を見るとゆっくりと口を開いた。



「俺は柊 拓哉がお前を諦めるとは思わねぇんだよ」

「っ……」



拓哉さんの名前が出た瞬間、私は固まってしまう。
ココに彼はいないのに何処からか監視されているんじゃないかっていう恐怖が突き刺さる。
体が震えそうになるけど、そんな私を遥斗はキツク抱きしめてくれた。
そのお蔭で私は何とかと自我を保つことが出来ている。



「……お前を連れ去って、はい終わり。
そんなんじゃ終わらねぇと思うからな。
前の場所は既に知られている可能性が高いし、いろいろ準備を整えてからお前を迎えに行きたかった」


遥斗は私の体を少し離し、視線を交じり合わせる。
真剣な目で見つめられると一気に体温が上昇していく。
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