男の秘密
それぞれの決断
『忍さん、日本を離れるのかしら・・・』

自分の部屋と違い、広すぎて落ち着かず、中々眠ることが出来ない。

だが、この部屋に居ると、病院を思わせるナースコール等は聞こえてこないので、その点については安心出来た。

両親の事故当時を思い起こさせる白い病室は、今でも苦手だった。

祖母は病院では無く、自宅で亡くなったので、その点だけは本当に助かった。

今回目覚めた時、偶然とは言え、一般病棟で無かった事は本当に助かった。

もし一般病棟で目覚めていたら、パニックに陥っていたかもしれない。

そう考えると、よく会社の医務室でパニックにならなかったと思った。

ふと、両親の夢を見た事を思い出した。

両親を失った時、大切な人は作らないように無意識に避けてきたのだと今回気付いた。

祖母を無くした後の喪失感が埋まらないまま過ごしていた自分にとって、心のより所が欲しかったのだと思う。

そんな時羽奈に出会ってしまったのだ。

今回は羽奈よりももっと、深い繋がりになる事は間違いない。

『失ったら私・・・』

ゾクリとして体の芯が冷える。

忍が日本を離れてしまえば、結婚を前提に付き合うと言うことを、白紙に戻す事があるかもしれない。

そうなった時、自分は一人で立っていられるだろうか?

折角誤解が解けて、幸せを感じていたのに、もう不安で一杯になった
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