一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
正直、私自身、耀への気持ちにはまだ戸惑いがある。

感情の赴くまま耀に付き合うことを提案してみたけど、私は本気で耀のことを好きなのだろうかとどこかで思う。

繊細な耀を傷つけてはいけないのに、軽率なことをしてしまったのではないだろうか、という後悔も。

でも耀は良いと言う。


「嬉しかったです」


主語のない耀の言葉。

続きを待つと耀は慎重に言葉を選ぶように前を向きながら静かな口調で話した。


「好きだと言ってもらえて。このまま死んでもいいと思えるほど嬉しかったです。おそらく吉木さんは僕の最初で最後の好きになれる女性だから」

「それはさすがに大げさですよ」


私と似たようなタイプはいないわけじゃない。

出会えるか出会えないか、その確率は別にしても最初で最後は言い過ぎだ。

でも耀は否定した。


「人と関わらない僕が吉木さんと出会えたことは奇跡的なんです。しかも僕を好きだと言ってくれた。奇跡以外の何物でもない」


少し興奮気味なのか耀の声は早口に変わっていた。

ただつかの間、耀の声が途切れ、歩みを止めた。

一歩先に出ていた私は振り返り、耀の方を見る。

すると私の手を耀はゆっくりと取り、しっかりと視線を交えて言った。


「吉木さんには迷惑だとは思うのですが、吉木さん好みの男になりますから。吉木さんを好きでいさせてください」

「それは私の不安を感じ取ったから言ってるんですか?」


こう言えば自分が不安に駆られていることを言うことになる。

でも耀の場合、耀自身の感情なのか、私の感情が移ってしまったのか、そこを聞かないと分からない。


「僕自身が不安なんです。吉木さんの不安は正直分からなかったです。多分、舞い上がってたんだと思います。吉木さんも僕と同じ気持ちでいてくれたんだって分かったから」


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