一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「髪型と服装を変えればきっと物凄く変わると思います」

「じゃあ、やってみる?」


蓮見さんが前向きに身を乗り出したのを菅原くんが止めた。


「いや、いきなり髪型を変えましょう、服装にも気を使いましょう、なんて言われたらイヤっすよ。自ら変わりたいって願うならいいかもですけど、それでいいと思ってしてるんですから、そんな提案されたら敬遠されると思います」


金髪、ピアスの菅原くんが言うと説得力がある。

それに菅原くんの言う通りだ。

本人が望まないものをこっちが強制したら確実に逃げられてしまう。


「そもそも恋愛を強制すること自体、変なんすから」


これもまた菅原くんの言う通り。

推進課は恋愛をしたいと思う人をサポートする部署であり、恋愛を強要することはしない。

だから本来、この社長の提案はおかしなものだ。

でも課長と話したように社長は人付き合いの苦手な息子を変えたいと思っているに違いない。


「ひとりの親として子供に恋愛をさせたいと願う気持ちも分からなくないよ」


私の親もいつ結婚するのか、とか相手はいるのか、とかいないなら紹介しようか、とか事あるごとに言ってくる。

その子を思う気持ちは大企業の社長の家庭だろうが、普通のサラリーマン家庭だろうがさほど変わらない。


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