カフェ・ブレイク
なっちゃんはいい子だ。
ずっと一緒にいたいし、必要なら結婚してもいいと思う。

でも、真澄さんに未練たらたらな俺が、なっちゃんを幸せにできるのか?

……もしここに真澄さんがいたら、たぶん俺は、なっちゃんの存在すら忘れて浮かれてしまうだろう。
それがわかってるのに、なっちゃんにプロポーズなんかしてしまっていいのか?
絶対、あとで破綻するって!


「章(あきら)さん、お疲れですか?元気ないみたいですけど。」
なっちゃんが心配そうにそう聞いた。

「いや。……ルミナリエでも行くか?」
「え!?」
俺の気まぐれな誘いに、なっちゃんは心底驚いたらしい。
「……うれしいけど、あの、今年はもう終わりましたよ?」

あれ?
「そうだっけ?」
……しまった、遅かったか。

照れくさくて仏頂面になった俺に、なっちゃんは言った。
「でも、誘ってくれて、うれしい。神戸の思い出、作ってくれようとしてるんですね?……もう充分ですよ。」

何も言えなくなってしまった。

違う!
俺がやりたいのは、思い出作りじゃない!
……プロポーズ……できるムードが欲しいんだ。

情けないけど、お膳立てしなきゃ、とてもできない!
酒の力を借りるわけにもいかないし。

黙ってる俺に、なっちゃんはぺこりと頭を下げた。
「あの、ちゃんと言えてなかったけれど、ここに置いていただいて、本当にありがとうございました。毎日が夢のように幸せでした。」

このタイミングでそんな挨拶をするなっちゃんに、腹が立った。

「明日にでも出て行くみたいな口上だな。」
「……ご迷惑なら、出ます。」

泣きそうな顔でそんなこと言うなよ。

「俺、一度でも、言ったか?出て行け、なんて言ったことないだろ。てか!本気で出て行くのかよ。……ここから通えば?家賃かからないし、交通費は支給されんだろ?」

勢いで、言った!
やった!
俺は、ずっと言いたくて言えなかったことをやっと言えたことにかなり満足していた。

が、なっちゃんは苦笑した。
「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえるなんて、思ってもみませんでした。でも、往復3時間以上かかるんです。今までみたいに、家事をちゃんと出来ないだろうし、逆に章さんにご迷惑をかけてしまうかも。」

……もう、決めてるのか? 
ココから出るって……俺から離れるって、決めたのか?

「ふぅん。そんなもんなんだ。俺。」

捨てられるのか……そんな卑屈な言葉が浮かんでくる。
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