カフェ・ブレイク
しばらくすると、賑やかな女子高生達が入ってきた。

あーあ。
せっかくの静かな時間が終わってしまった。

純喫茶マチネは、再び、笑い声に包まれてゆくことだろう。

こっそり、BGMのボリュームを上げてみたけれど、女子高生は無意識にさらに声を張り上げておしゃべりの花を咲かせた。

ハーフくんが諦めたらしく、席を立った。
彼の美貌に、一瞬女子高生達は息を飲んだらしく、店内が静かになった。

「『おしゃべりはやめて、お静かに』……ホント、楽しい曲ですね、マスター。」
ハーフくんは、わざわざコーヒー・カンタータの邦題を口に出した。

女子高生達が慌ててるのを見て溜飲が下がったらしく、機嫌は悪くないようだ。

「ありがとうございます。また、いつでもお立ち寄りください。……祖父は、この店はあなたのおばあさまを迎える港でありたいと常々言っていました。私も祖父の意志を引き継いで、店を続けていくつもりです。」
営業トークじゃなく、心からそう伝えた。

ハーフくんは、うれしそうにほほ笑んだ。
「ありがとうございます。今度、父が帰国したら、連れてきます。祖母が祖父以外の男性を好きだったことを、父は知らないんです。何も言わずに連れてきて、驚かせようっと。」

俺も釣られて、笑顔になった。
「是非お越しください。……お友達のヨシトくんも。いつでもお越しください、とお伝えください。」

なっちゃんとの過去も、桜子との関係も度外視して、また来てほしい。
彼もまた、大切なお客さまだから。



「帰るよ。マスター、また来るよ。」
女子高生の声がまた大きくなったからか、続いて小門もレジにやって来た。
「ああ。……真澄さんと一緒に寄ってくれたらいいよ。」

小門は、一瞬の間を置いて、ふっと笑った。
「そうさせてもらうよ。真澄とスクラップブックを眺めるのも、よかろう。」

「俺が店を継いでから、一度もないんだぜ……2人揃っての来店。」
「そうだっけ?」
と小門は首を捻った。

「そうだよ。だから、2人で来てくれ。いつも通り、とびっきり美味しいコーヒーで迎えるから。」
そう言って、小門を送り出した。


さて、モンスターのような女子高生達にも、美味しいコーヒーを入れますか。
ついでに、俺にも1杯。

今日は、千客万来で疲れた。

家に帰れば、中沢さんと郡さんが、また大騒ぎしてるんだろうし。



……うん。

俺も、カフェ・ブレイクしよう!





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