恋より先に愛を知る



☆

12月5日。


とても静かな朝でした。


階段の下から15段目。


閉じていた目を開けて、私は空を見あげた。


「雪、ちゃんと降ったかな・・・」


そんな力のない言葉を、ぽつりと呟く。


「降らないだろうな」


微かに笑う私の目に、1人の少年が映った。


「あかね!」


「海斗・・」


海斗は息を切らせて私を呼ぶと、
階段をかけあがってきた。


海斗は冷たそうに手を赤く染めて、
上着も着ないでそこにいた。



私は立ちあがって海斗と向かい合う。


海斗は私をじっと見つめると、
勢いよく頭をさげた。


「海斗!?」


「ごめん!俺、お前のことずっげえ傷つけた!!
 ただ俺は・・・お前のこと、本気で好きになったんだ。


 それを・・・そんなやつに負けんのかって思うと
 悔しいっつうか、腹立つっつうか・・・

 とにかく、本当にごめん」



海斗は口早にそう言うと、一息おいてまた続けた。


「葵のこと忘れたわけでもねえし、
 中途半端にお前を好きになったわけでもねえ。


 これだけはわかってほしくて・・・でも、俺馬鹿だよな。
 葵はもういねえのに、引きずってばっかで、
 似てるお前を好きになって・・・卑怯だよな」



海斗が手を強く握りしめたのを見て、
私は深く息を吸うと海斗の顔を覗き込んだ。


「海斗、ありがとう。あんたがいなかったら、
 きっと私も東京になんか行けなかったし、
 大事なものも捨てちゃってた。


 色々と助けてくれて・・・それから、
 好きになってくれてありがとう。


 でもね?私はやっぱり、
 あんたの気持ちには応えられない」



「あかね、お前本当に・・・それでいいのか?」


「うん。私が自分で決めたことだから頑張る。
 だからあんたも、気持ちに
 整理がつけられるように頑張りな?


 大丈夫。卑怯なんかじゃない。
 あんた、見かけによらずいいやつだし」



私が笑うと、海斗は顔をあげて私を見つめた。



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