鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集

瀬田も鈍感?(先輩)

「あ、店長。
瀬田のヤツ見ませんでしたか?」

俺は目の前を通り過ぎようとしている店長を呼び止めた。

只今いつものイタリアンレストランでアルバイト中。
1こ下の瀬田は今日シフトに入っていて、この時間にはいるはずなのに見当たらない。
俺はお客様から瀬田宛に伝言を頼まれていて、さっきから探している。

「お前、忘れたのか?
瀬田は今日模擬披露宴の日だろ?
急きょシフト変更したはずだが?」

……。
言われてみれば、そうだったかも知れない。

イケメン瀬田は、去年の秋の学校の文化祭で、可愛い彼女と一緒にウエディング姿でカップルコンテストなるものに出場したらしい。
その姿が素敵だと口コミで学校外にも広まって、知らないところで「伝説のウエディングカップル」と称されていたとか。
俺の通う高校は瀬田たちとは違うし、ちょっと遠いからか、俺は知らなかったけど。

で、その噂のカップルに目をつけたとある結婚式場に、パンフレットのモデルやら模擬披露宴の新郎新婦役やらを頼まれてしまった、と言うのだ。
まさか後輩が伝説作ってるとは。
聞いたときは驚いたものだ。
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