鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「先輩、これ置いてくるんで。
少しの間ホール見ててくださいね」

瀬田も引っ込んで、一人ホールに残された俺は考える。

あいつ、美空ちゃんには滅茶苦茶鋭いし、彼女のことなら知り尽くしてるって態度だけど。
案外自分のことに関しては鈍いのかも知れない。
超絶鈍感な美空ちゃんほどじゃなくても。
さっきの女性が何を言いたかったのか、多分分かっていない。

「あ~あ、実は鈍感同士か、あのカップル。
あ、いらっしゃいませ」

俺はこみ上げる笑いを懸命に堪えながら、仕事を続けるのだった。

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