恋色シンフォニー
最初は、ヴェルディ『運命の力』序曲。

……見つけた。

僕の、運命の人。

セカンドヴァイオリンのトップサイド。

化粧していないから地味な印象だけど、芯の強さがうかがえる強い視線は、今と変わらない。

「……あら? この人」

マリも気づいた。

きれいな弾き方、するじゃないか。
早いパッセージでも、左手はきちんと回っている。


次は、リストのピアノ協奏曲第1番。

「あら、今度はファーストのトップサイド」

「よくわかりましたね。この間、駅で会ったコです」
加地さんがマリに説明する。
「大学から始めたコなんですけど、えらく練習するコでしてね。まあ筋も良かったんでしょうけど、歴代の初心者組の中でも、トップクラスに弾けてましたね。執行代になった3年の春には全曲トップサイドやるくらいで」

そうだろう。彼女がのめりこむパワーは半端ないはずだ。
今の仕事でもああなんだから。
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