恋色シンフォニー
脇から出てきた手が、部品に挟まっている紙を取ろうとしたので、慌てて止めた。
「だめっ!」
「えっ?」
「指を痛めたら大変でしょ!」
三神くんはびっくりした後、笑い出した。
「これくらいでケガしないって」
「けっこう熱いから、危ないよ。私がやるから」
三神くんを近寄らせないよう、コピー機の前に陣取り、詰まった紙を取り除いていく。

今日も、前みたいな壁を感じない。
普通に話せてる。

「……過保護だなぁ」
「当たり前だよ。あんなに……」
「あんなに?」

「……何が“そこそこうまい”コンマスよ。めちゃくちゃうまいじゃないの」

「光栄です。ご来場ありがとうございました」

よし、紙づまりは直った。
再びコピー機は紙を吐き出し始める。

「……なんで黙ってたのよ」
肩をすくめる三神くん。
「驚かせようと思ったんだ。びっくりした?」
全然悪びれる風はない。
「みんなに言いふらしてやる」
「……まあ、そろそろ潮時だよね。次回の定演ポスターに名前出ちゃうし。でも、橘さんならきっと秘密にしてくれると思ってる」
くっそぅ……
コピーが終わった。
「……この……腹黒コンマス!」
捨て台詞を吐き、OA室から出ていく私の後ろに、三神くんの笑い声が響いていた。
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