婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

私を安心させるその声も、私を包み込むこの胸の温もりも…私の知ってる圭司のものだった。

そうだよね 
記憶がなくたって、やっぱり圭司は圭司だもんね…。

ホッとして見上げた私に圭司が言った。

「でも ちょっと嬉しいかな。なつがヤキモチ妬いてくれるのは…。」

「えっ もう こっちは、いつもいつもヤキモチばかりで大変なんだよ この結婚指輪だって全然役に立ってくれないし。会社にはたくさん圭司を狙ってる子がいるってこと、少しは自覚してね…。」

私は圭司の左手に触れながら、深いため息をついた。

「いや どっちかって言うと、自覚が足りないのは、なつの方だと思うけどな~ 俺 聞いたんだよね~ 昔 なつが酔っ払って夏樹にキスされそうになってたって…。」

「えっ…あっ それは…その…」

あの時の事を色々言い訳したいけど、結局 私の自覚が足りなかったのは事実だから何も言えない…。

「俺 すごく、なつのこと心配だよ… それになつはさ、あの松井っていう同期にもちょっと無防備すぎるだろ? この間だってさ あいつがその気になれば、なつを襲うことだって有り得た訳だし、ちょっとあいつに気を許しすぎじゃない?」

今度は圭司が深いため息をついた。

「あ… でもね 松井くんは私の嫌がることは絶対しないし…。昨日だって、まだ 圭司に殴られたとこ痛そうだったけど、よりが戻って良かったなって笑って言ってくれたんだよ。」

食堂での松井くんの言葉を思い出す…。

『おまえの旦那ってさ 昔 相当ヤンチャだっただろ? あんな甘い顔してるくせに、キレたらおっかねーのな。俺 今回だけは、マジ殺されるかと思ったよ。でも まあ より戻って良かったな…。なつを笑顔にさせられるのは、あいつだけだもんな…。もう 俺に手を焼かせんなよ!』

そう言ってくれた松井くんに、私は頭が上がらなかった。






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