それだけが、たったひとつの願い
 ショウくんは一番年上なだけあって、昔から賢くてしっかり者で面倒見がよかったけれど、薫平はショウくんと性格が真逆で、天真爛漫で明るくていつも元気いっぱいだった。

 俺はというと、当時は引っ込み思案で何事にも物怖じする性格だったから、ふたりがそれぞれ正反対でも、俺にとってはどちらも尊敬できて敬愛する対象だった。

「ジン、河川敷の原っぱででっかいカマキリを見つけたから一緒につかまえに行こ!」

 そうやって家まで誘いに来てくれるのは決まって薫平で、俺は「うん」と元気よく返事をし、虫かごと網を持ってあわてて家を飛び出していた。
 夏に虫取りをした記憶は、大人になった今でもまだ鮮明に残っている。

 本当の三人兄弟のような仲の良い関係が永遠に続くと、このころの俺はそう思っていた。

 しかし、人生は何が起こるかわからない。
 まだ幼い俺の身に、突如不幸なことが起こった。

 俺が七歳、薫平が八歳、ショウくんが十二歳の冬だ。

――― 俺の両親が離婚した。

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