それだけが、たったひとつの願い
「それからもうすぐ美山さんがこっちに打ち合わせで来るのよ。終わるころにはお昼だから、ふたりでランチしておいで」

 会社の先輩の麻耶(まや)さんは、サッパリした性格の面倒見の良い女性で、見た目も中身もデキる女の象徴といった感じだ。なにもかもがカッコよくて私は密かに憧れている。

「由依ちゃんと美山さんって、付き合ってんの?」

 お客様へお茶を出して席へ戻ると、麻耶さんの後輩で私の先輩社員にあたる上森(うえもり)さんが声をかけてきた。
 決して仕事ができないわけではないけれど、いつも手厳しく麻耶さんに指摘されている男性社員で、どうやらさっきの麻耶さんと私の会話を聞いていたらしい。

「付き合ってないですよ」

「すごく仲がいいし、恋人でもおかしくないのに」

「私たちはそういう関係じゃないんです」

 何度否定しても、このふたりは私と甲さんが恋愛関係か、もしくはその一歩手前だと誤解しているようだ。

「美山さんは私の保護者って感じかな」

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