それだけが、たったひとつの願い
スピンオフ・ショウの恋
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「帰るの?」

 俺がベッドから抜け出そうとすると、肩に細い手がしなだれかかる。

「君はもう少し寝て帰ればいい」

「酷い人ね。女優をホテルのベッドに置き去りにしようだなんて」

「俺は明日から日本なんだ。準備もあるし仕方ないだろう」

 女優というそのカテゴリーで合ってはいるが、落ち目になっていると自分で気づいていないのだろうか。

「あなたの抱き方、素敵だったわ」

「そりゃどうも」


 柳 莉紋(リュウ リーウェン)……四年前に清純派で売り出し、人気を博したのはもう過去の栄光となっている。

 モデルから女優に転身して以降、現場でワガママばかり言う彼女にスタッフは皆嫌気がさし、今は仕事が激減している状態だ。

 演技が下手なくせに態度だけは誰よりも大きいとなれば、周りが離れていくのは当然だろう。
 顔がかわいいだけなら、芸能人はほかにいくらでもいるのだから。

 そのあたりをわかっていないのが、この女の浅はかなところだ。


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