それだけが、たったひとつの願い
 最初はどんな人かわからなかったので多少なりとも警戒したけれど、ジンと話をすればするほどやさしい性格なのだと伝わってきた。

 決して上辺だけではなくて、人間性や人柄から伝わってくるものだから心から癒される。
 それを実感すると私は涙が止まらなくなった。

「今日はいろいろあったみたいだしな」

 ジンが私に手を差し伸べて頭をゆっくりなでたあと、今度は頬に伝った涙を拭う。
 男性だから大きいのは当然だれど、指が長くて綺麗でやさしい手だった。

 なぜだか今、ジンからキラリと零れるような光を感じた。
 私の気のせいではなく、やはりジンは知らぬ間になにもかも引き込んでしまうような不思議な空気を時折まとう。

 ジンがゆっくりと自分の胸に私の頭を引き寄せた。
 その胸の温かさに、着ていた心の鎧を全部脱ぎ捨ててすがりつきたくなった。

 人生最悪のクリスマスイヴの日。

 突然私の前に現れた男 ――― それがジンだった。

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