エリートな先輩の愛情を独り占め!?
餌付け攻撃

「お前ほんっと美味そうに飯食うよな。お前の唯一の長所だよ、そこ」

研修時からずっとお世話になっている、三年先輩の八谷(ハチヤ)先輩が、激辛ラーメンをすすりながらそう言い放った。
身長百八十センチ越えで、高学歴で理系なのにバイリンガルという最強のコンボ。大手食品メーカーの開発のリーダーとしてバリバリ働いている彼には、研修時から仕事以外でも大変お世話になっている。

「やっぱタマと食うと飯美味いわ」

そう、主にランチの相手……餌付け対象として、とっても可愛がってもらっているのだ。

「タマってあだ名やめて下さい、猫みたいじゃないですか……」
安っぽい丸椅子は、コンクリートでできたでこぼこの床と相性が悪く、少し動くだけでガタガタ音を立てる。私は、そんな丸椅子に座りながら、カウンター席で社内一のイケメンと激辛ラーメンを啜っている。
「おい、食べ足りてるか? 餃子食うか? チャーハンは?」
「いい加減にしてください私を太らせたいんですか⁉︎ 部活帰りの娘じゃないんですからもう……餃子が食べたいです‼︎」
「おっちゃん、ジャンボ餃子追加!」

駅から少し離れたところにある、地下一階の錆びれたこの中華料理店で、今日も私は八谷先輩に餌付けされまくっている。
職場の同期の女の子には、八谷先輩が直属の先輩であることをとても羨ましがられるが、八谷先輩のこの餌付け癖に果たして美意識の高い彼女たちは耐えられるのであろうか。
八谷先輩は超グルメ家で、女の子に美味しいものを食べさせることが趣味らしく、後輩である私が今はメインターゲットになっている。どうにも食べ物を頬張っている姿を見ると癒される性癖らしく、私は八谷先輩のせいでこの半年で二キロ太った。本当に許せない。
ただでさえ丸顔なのに、このままでは本当に名前通り玉のようになってしまう……。
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