エリートな先輩の愛情を独り占め!?
八谷先輩が怒った日
八谷先輩は、同期や上司にはハチと呼ばれている。そんな犬みたいなあだ名なので、タマとハチで仕事をしているとかウケる~と、周りからはよくからかわれる。私は全くウケないしなにも嬉しくない。

八谷先輩が私をランチに誘って餌付けしまくるせいで、私はすっかり八谷先輩とセットみたいなイメージを持たれてしまった。

「おいタマ、今日も弁当かよ~」
昼休憩になると、八谷先輩が私のデスクにやってきて、椅子をがたがたと揺すった。
「本当にすみません、他の方を誘ってください……」
「駅前に気になるビストロできたんだよ~、お前の好きなとろとろオムライスあるぞ~」
「すみません本当に……」
心苦しそうに謝ると、八谷先輩はちぇ、と唇を尖らせて、私のお弁当が入った小さなランチバッグを掴んだ。
「仕方ない、行くぞ」
「え、どこにですか」
「今日は俺も社食にするよ。食堂で食おうぜ」
ほーらおいでー、とまるでペットを引き寄せるかのように、ランチバッグを揺らしながら先輩が先を歩き出した。
八谷先輩と一緒にランチをするのは約一週間ぶりだったので、私は結構嬉しかった。八谷先輩とのランチは、やっぱり楽しいから。


「お前それしか食わねえの? 子猫かよ」
「ダイエット中なんですよ、何度も言いますが」
二十九階にあるビュッフェ形式の社員食堂に着くと、八谷先輩は私のお弁当を見て表情を引きつらせていた。
八谷先輩はプレートいっぱいに料理を盛っていて、別添えでカレーライスも付けていた。そんなに食べるのにどうして太らないんだ……と軽く殺意が沸くほど、八谷先輩は大食いである。

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